2022.08.29~10.03 Yosemite・Bishop Climbing遠征

みんな,クライミングしてるか??

OB(M1)の石川です.8/29~10/3にかけてYosemite,Bishopにてクライミング遠征してきました.

個人的な海外遠征ですが,部の装備を拝借したので,この場にて簡単?に報告をしようと思います.

より詳しい内容(行程,持参した装備,トレーニング内容等)はどっかでやる予定?の報告会で話すつもりです.

いざ本編へ↓

*場所:Yosemite/Tuolumne/Bishop (カリフォルニア州, アメリカ)

*期間:2022年8月29日~10月3日

*メンバー

石川航(農工大ワンゲルOB)

主将だったらしい.イムジン河(小川山)を登れずにヨセミテに来てしまったことを反省している.

T(中央大山岳部OB)

2019年文登研にて,僕のパートナー探しの罠にハマったクライミングジャンキー

*移動

飛行機(サンフランシスコ経由)+レンタカー(日産ALTIMA)

*Yosemite,Tuolumne編

8/30にヨセミテに到着.

マジか,あれ岩か!

そう,El Capitanはマジでデカい.スカイツリーと東京タワーを足したくらい.

前半8/30~9/6,後半9/15~9/30に分けて滞在した.

本当は35日丸々ヨセミテに滞在したかったのだが,連泊制限を超えた我々は一度ヨセミテを追い出された(泣)

前半は日中の気温が40度を超え,クライミングシーズンとしてはイマイチ,いや最悪だった.岩はジュウジュウに熱され,ハンギングビレイ中にはクライミングシューズのソールが溶けて足裏に張り付く感覚がした.

ヨセミテ到着直後は極めてハングリーだったので,日中から大量の水を背負ってマルチを継続していたが,朝と夕方に登攀するのが得策だと思う.前半は謎のトレーニング精神からかヨセミテに1週間しかいない人のムーブをかましていた(OMG)

35日間をまとめるなんて到底無理!ということで,登った中で印象に残ったルートを紹介する.グレードはYDS表記に準ずる.王道ルートや超有名クラシックばかりです,すみません.

・Penelope’s problem 5.7, 5.6, 5.6 3P

左のクラックが取りつき

場所はSwan slab.Camp4のすぐ横にあるスラブ状岸壁.とはいってもそこそこ傾斜はある.初心者向きのエリアで,ヨセミテ初対戦の我々も手合わせしてもらった.5.7だけをやるつもりが,ローカルクライマーに上まで行って来いといわれ,半ば強制的に3Pつなげて登ることに.

1P目はハンドジャムバチ効きの綺麗なクラック.さぁ登るぞ!と下部のスラブにスメアして一言,「河又だ」(笑).花崗岩ではあるがつるつるに磨かれていて石灰岩みたい.以降この件は多すぎるので省略.

2P目は脆くイマイチだったが,3P目に入って少し高度を上げると緩傾斜に綺麗なフィンガークラックが走っていた.5.6でこんな綺麗なフィンガーかよ!

 ヨセミテのルートクオリティを実感したピッチだった.終了点からはヨセミテの壁達がドーン.下降はローカルクライマーの言ってた通り超easy. ヨセミテ1発目のルートに丁度良いと思った.

フィンガーは快適そのもの

・Nutcracker 5.8 5P

ヨセミテで最も登られているマルチといっても過言ではない,超ハイパーメガクラシック.混雑を避けるため,午前中は違うマルチを登り,夕方遅くから取りついた.

1P目,OWでヘルメットを外した

1P目はハンド~ワイド~ハンド~フィンガー.トポにはeasyワイドと書いてあったが,悶絶した.リードだとワイドに入りすぎてしまう癖があり,グレード以上のOW登りをしてしまった.後半はパンピーかつpolishなレイバックをこなす.5.8?(笑)

60mロープぎりぎりまで登ってピッチを切った.別日に1P目のバリエーションである5.9フィンガーを登ったが,そっちは超ツルツルでやばい(笑) でも,ラインは超美しい.

1P目5.9ver.これまた美しいフィンガー.
3P目

2P目は5.4歩き.3P目5.7は高度感のある1手からフレーク状のフィンガーを上がる.プロテクション切れを防ぐため,ランナウト.少し嫌な箇所がある.

4P目

4P目5.8は下部のスラブで嫌な感じのムーブを.それ以降は浅いフィンガーになるのでプロテクションはとりにくい.Tが落ち着いてリード.

5P目5.8はルート上の核心.ハングをトラバースし,シンフィンガーのクラックからマントルを返す.シンフィンガーはかなり薄く,プロテクションのトーテム黒は半効きだった.マントルは容易.

すぐに抜けられると舐めていた僕はヘッデンをフォローに預けたまま上がってしまった.

しかし,マントルを返した後一瞬であたりは真っ暗になってしまった.

上部はトポでいう“No pro”セクション.これがダイクのピンチホールドとスメアで暗闇だと踏んでいる感じがしない.しかも手がヌメヌメ(笑).

このグレードでは絶対に落ちないと自分に言い聞かせ,15m近いランナウトをこなした.

最後,微妙に悪いマントルを返してトップアウト.顔面蒼白.ルート上のメンタル的核心だと思う.ヘッデンなしはマジで反省.全ピッチOSだった.

Oh…F*ck

・Church Bowl Tree 10b

ナッツがよく効く👍

一歩目から100万歩by杉野さん.ピトンスカーとpolishに慣れるには良い.終了点のハンガー位置が謎である.

・Bishops Terrace 5.8 2P

2P目

下部はイマイチな5.7.上部はびっくりするくらい綺麗なダブルクラック.いい写真が取れなかったので,気になる人は検索してみて!

このルートの何がいいって?それはサイズ感.ハンドジャムバチ効き.でも途中のワイドセクションが少し気持ち悪かったりする.

・Commitment 5.9 3P

下降もBeautiful !!

基本的に快適なハンドジャムが続く.3P目が核心のルーフ超え.サイズは悪くないが,足がイマイチ.大量の水を背負って登ったが,僕はNutcrackerの方が悪いと思った.日本人パーティと遭遇.

・[Tuolumne Fairview Dome] Regular route 5.9 12p


この壁のど真ん中をオールフリー&オールNPで抜けられる? やるしかないでしょ.

Fairview Domeは約2830m.

涼を求めてTuolumneに移動したが,夜は氷点下.登攀時刻を遅らせたが,結局気温は5度程度で終始風にさらされた.

まじで足裏感覚がない.アルパインかな? 

下部3Pはクラックの中がびしょ濡れ.水が滴り,チョークが一瞬でなくなるレベル.核心の5.9より3P目の5.8フィンガーの方が悪く感じた.3P目は,また大量の水を背負ってフォローしたので,パンプした(笑) 

4P目のwhite flake 5.8は久しぶりのフェースムーブ.6ピッチ目は気持ちの良いフィンガーとルーフ超え.7ピッチ目にリンクさせたので,60mロープいっぱいを楽しませてもらった.

9ピッチ目以降はスタカットではあるものの,時短のためほぼノンプロでトップアウトした.寒かったけど最高のルート.繰り返すが,こんなラインを見たら登るしかないでしょ?!

さみぃ…
3P目
4P目,White flake
6P目,ルーフ超え気持ちよすぎ.
グレード5.0らしい(笑)
Top Out ‼

・Washington Colum South Face 5.8 C1/V10&12c,11P

ワシントンコラム
エイドセクション
ユマール,ホーリング.ビッグウォールは作業が多い.
Dinner Ledge (寝場所はもう少し広い)

Big Wall入門ルート.アメリカンエイドで上がった.下部のホーリングはマジだるい.

体調崩していたのもあり,帰国前ギリギリに申請書を出してトライ.結果,途中敗退.特別ラインとして魅了されたわけではないが,良いビッグウォール経験となった.Dinner Ledgeの壁泊はマジ最高!そしてこのクライミングを機に,自分のクライミングに対する考え方が大きく変わった.

・Midnight Lighting V8

説明はいらないだろう.世界一有名なボルダー課題. 

本遠征の個人目標の1つ.敗退しました.


Midnightになるとクライマーがわらわらと湧いてくる.

ホールド自体は思っていたほど悪くはなかったが,いかんせん遠い.核心のライトニングホールドはランジで止められたが,マッチできなかった.

もっと打ち込む時間が必要だった.ルートの合間に何となく取り組んでしまったことをとても後悔している.雑魚を寄せ付けない歴史ある最高のルート,そして自分の弱さを改めて自覚させられた.

*Bishop編

Bishop Buttermilk
Ambrosia V11 ,いつか登りたいよね.

予定では最後の1週間に寄る予定だったが,早々にヨセミテを追い出されたのでツアー中盤に組み込んだ.Valleyからは車で約2時間半.中古のクラッシュパッドを2枚150$で購入.本当はもっと欲しいけど金がない.宿泊はButtermilk前で野宿.砂漠×野宿は最高!

Bishopもシーズン外なのでクライマーが少なく,有名課題でもチョーク跡が消えていることも多かった.そして40度を超える気温で手汁が止まらない.常に腰チョーつけて登ったと思う.短期間だったので,エリアはButtermilkとHappy boulderの2箇所に絞った.

簡単な課題からとても面白い.グレード関係なく面白かった課題を紹介する.

・Every Collar You Are V6 

ジムナスティック!

Happyの看板課題.フィンガージャムを使ったとか使ってないだとか…

・Solarium V4

御覧の通り熱々…

トポの表紙課題.登るしかないでしょ.常に日が当たっている.

・Milks The Milks V6 

トポの挿絵に惹かれました

“must do” byトポ.上部はチョーク跡が消えており,ヌメヌメのスローパーを使った.

・Iron Man V4

ほぼ1日日が当たっていた.

世界で最も登られているボルダー.超有名クラシック.ラインの明瞭さ,そしてV4というグレード.OSしかないでしょ.最高のラインです.

・The Hunk V2

マット要りますか?

最高のハイボル.デジマル換算すると11bcらしい(笑).最後はトポ通り”requires some cool”

・Good Morning Sunshine V1

ハイボール入門らしい.

【感想・反省】

遠征自体が楽しかったのは勿論のこと,ヨセミテという明確な目標をもって取り組んだトレーニング期間も楽しかった.トラッド,ボルダー共にグレード的な成長が見られなかったのはとても残念だったが,それ以上に多くの学びを得られた.特にクライミングの聖地ヨセミテでは.

ヨセミテのクラシック課題はピリッと辛く,ランナウトを強いられることが少なくなかった.しかし,あえてボルトを打たないでオールNPで初登した先人たちのスタイルは美しく,尊敬するばかりである.そしてそのおかげで僕らはデカい壁,綺麗なラインをギアやボルトを残置せずに登ることができている.なんて幸せなことだろう.

Elcap Base

ヨセミテの5.10以下は全て一緒.こんな言葉がある.ヨセミテで登るまで,ただただ辛いという意味だと思っていた.しかし,いざルートに取りついてみると,あらゆるルートにおいて,圧倒的なスケール感,クオリティの高い内容,時にピリッと痺れるランナウト.なんと充実していることか! 

そこには,グレードだけでは表せない総合的な力が求められている気がした.

クライミングを続けているとグレードばかりに目をとられてしまう.その結果,自分の中で傾斜は…スラブは…というふうに得意不得意で選んでしまう.しかし,デカい壁の前ではそんな”ちんけな考え”は一切通用しない.弱いうちから好き嫌いをしていたら強くなるという未来はない(自戒の念).

また,ヨセミテではプロテクションの節約やロープドラッグを防ぐために,計画的にランナウトさせる技量・メンタルが多く求められた.そこで,Bishopでは意識的にハイボルを登り,時にノーマットというスタイルをとった.「このグレードでは絶対に落ちない」という実力に裏付けられた自信や感覚が自分の中で少し研ぎ澄まされた気がする.

無論,落ちてはいけない.

無数のボルダーが転がるビショップ.気に入ったラインをよりシンプルなスタイルで登る.

クライミングは自由だ!!

*コンディショニング

トラッドからボルダーへ身体を切り替えるのは意外と難しかった.Bishopは移動する直前になってやっとフィジカルと指皮がボルダーに慣れるようになった.そのため,なかなか高グレード課題に打ち込むことができなかった.

Soul Slinger V9とかStained Glass V10に取り組みたかったが,とにかく時間が足りない.ツアー中にグレード的に成長したいのなら,ボルダーだけのツアーをするorもっと長い期間ツアーする必要があるだろう.(でも,結局はこれが自分の実力なのさ…)

そして最も反省しているのはツアー中7日程度寝込んでしまったこと.

Bishop⇒Tuolumne間で最高温度40度,最低気温-5度?と未体験の気温差.前日まで車でクーラーを使っていたのに翌日は暖房をフル稼働(笑)

当たり前のことだが,下界なら治るはずの風邪がテント泊だと治らない.岩が,そして壁が目の前にあるのに登りにいけない.まさに生き地獄.

天候や標高についてもっと詳しく情報を収集するべきだった.部活でさんざんやっていたこと故に,悔やまれるばかりだ.

暑くて死んでいる僕

まだまだ登りたいルートはたくさんある.もっともっとハードなルートにトライしたい!

Middle Cathedral DNB, Half dome Northwest Face, Separate Reality, Stained Glass … (それこそここに書ききれない)

自分には何が足りないのか,どうすれば強くなれるのか.もっと考えながらトレーニングを積む必要がある.もし機会があれば,ヨセミテ・ビショップに戻って来たい.その時は,弱いとか時間がないとか言い訳することなく,魅了されたラインたちを完登したい.

とどのつまり…

弱かったです! また来ます!!

I’ll be back…

*最後に

テント, ロープを貸してくれた農工大ワンゲル現役部員の皆様,装備提供をしてくれた他大学山岳部の友人,現地で大量の食料や日用品を分けてくださった在米のお二方.そして35日に渡って命を預け合ったパートナー.本当にありがとうございました.

文責:石川

お・わ・り

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*P.S

ヨセミテのシステムが面倒でかなりストレスだったので,メモを残しておきます.参考までに.

・5月中旬?~9月15日にかけてヨセミテは観光のピークシーズンになるため,公園内への入場制限やValley内での連泊制限が設けられる.

・キャンプ場の予約をしていない場合には,事前の入場予約が必要で,申請料2$,35$/車1台.予約はhttps://www.recreation.gov/を使う.

・Valley内にはCamp4, North Pines, Lower Pines, Upper Pinesの4つのキャンプグラウンドがあるが,ピークシーズン中は1週間の連泊制限がある.すべてのキャンプ場は事前予約制で,Camp4は抽選制(10$/回),その他のキャンプ場は日時とサイトが空いていれば予約できる(36ドル/日).基本的ほぼすべての日程が埋まっており,キャンセルを見つけ次第予約するようにした.

・Pine系のキャンプ場は前日になればキャンセルが出ることが多い.特にUpperはキャンセルが出やすかった気がする.

・Camp4は9月15日までは抽選に当選しやすかった.しかし,9月15日以降の連泊制限解禁後には抽選制は終了し予約制に代わる.普通にキャンセルが出ることが多く,recreation.govに“First come, First serv”の表示が出ていれば,Kiosk(Camp4にあるレンジャーの詰め所)に並んで,予約をすることができる.Kioskは8時半に開くので,7時半から並んだら毎回先頭だった.土曜はキャンセルが出にくいが,日曜はチェックアウトの人が多く,空きが出やすかった印象.

・チェックイン,チェックアウトは12時.多少ずれても大丈夫.

・Hodgdonキャンプ場はvalleyから離れるものの,空いていることが多い,

・Tuolumne Meadowsキャンプ場は閉鎖中.道路のいたるところで工事が行われており,片側通行の車線規制が多かった.

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